La cadetta Yumikko

ソプラノ歌手 森有美子 オフィシャルブログ

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セミナーを終えて

久々に思い切り風邪をひいてしまった。。。先日下田で小林道夫先生のサマーセミナーに参加したのだけど、それが終わってほっとしたんだろうな。セミナーから帰ってきた次の日の夜中にいきなり発熱。知恵熱か…?体中の関節が痛いのでもしやインフルエンザだったらどうしよう!と思ったけど、翌日病院に行ってみたら“ちょっと季節はずれではありますけど、夏風邪ですねー”とのこと。現在は熱もほぼ下がって体調自体はそんなに悪くないんだけど、咳と喉の痛みがけっこうひどい。最近なんだかずっと元気だったような気がするのでこんだけこじらせたのは久しぶり。やれやれ。

しかし、つくづくと改めて道夫先生の深さを実感した4日間でした。お会いしてセミナーが始まればその柔和な口調に緊張がほぐれてくるのだけど、それでもやはりお会いするまではものすごく緊張する。先生を前にするとすうっと背筋が自然に伸びてしまう。

道夫先生のレッスンは、決して練習していったからと言って成果が出るものではない。自分なりにさらっていって、きちんと自分なりには歌えるようにしていっても、たいていは自分のやって言ったものとは全く違う深い視点で、ものすごく鋭く深いことをすとん、と言われて、最初はたいていおっしゃってることの半分もできずパニックになる。しかしパニックになっていると、先生に“楽譜にとらわれないで、もっと音楽に任せなさい”と言われるので、そこでやっと“自分の音楽をする”のではなく“そこにある音楽に委ねる”という感覚になるのだ。もちろん、最初から音楽に自分を委ねられればいいのだろうけど、でもそこに行きつくにはまず自分の音楽があり、それをいい意味で壊してもらって、戦って、やっと委ねられるようになるのかもしれない。暗闇で天使と明け方まで戦ったというヤコブさんみたいな話だ。

本番で歌う予定の140番のカンタータのイエスと魂のデュエットがなかなかうまく寄り添うことが出来ず悩んでいると、ある大先輩にこう言われた。“道夫先生がおっしゃってることは、本当に一流の音楽家に求めるものと同じレベルのものなんだよ。だから今、あなたが言われていることはすごく難しいことだと思う。でも、その難しいことを、学生や若い人たちにも同じく求めるところが先生の素晴らしいところなんだよね”それを聞いて、本当に心が震えた。先生の指導を受けるときには、何も予測が出来ないのでまさに身一つで向かっていくしかないが、それは恐ろしくもあり、また至福のひと時でもある。そんなひと時をほんの少しでも持てることは本当に幸せなこと。

さてところで、昨年の足の怪我(足首の靭帯損傷、全治に4ヶ月)から8月あたまでちょうど1年が経った。昨年はこの下田のセミナーのソプラノの参加者が少なかったため、怪我をして2週間という時期にもかかわらず休むことが出来ず(最後にカンタータの演奏会があるので)松葉杖で参加したのだった。ボランティアの方に送り迎えして頂いたり、たまたまボランティアの方の旦那様が整形外科医だったということもあってお声がけして頂いて、痛み止めの注射をしてもらったり、宴会ではみんなに食べ物をとってもらったり(笑)いろいろな方に本当にお世話になったのを、しみじみと思い出す。朝、ホテルから1人で車椅子で会場に向かおうとして、道中ほんのちょっとした傾斜がものすごく大変だったこととか。

こうして1年経って改めて考えてみると、私にとってあの怪我は本当にあってよかったなと思う。何もかも不自由な状況の中、最初は絶望することばかりだったけれど、その中で家族や友人たちをはじめとして、出会う全ての人たちのありがたみを本当に痛感したこと、どれだけ自分が自分の体を痛めつける忙しない生活をしてきたか、その忙しない生活でどれだけ自分の心が荒れてしまっていたかに気づいたこと。ふと立ち止まることで、今までの生活がどれだけ自分に負担があったのかわかって、本当にぞっとする思いでした。

足のリハビリをしながら、物理的にも精神的にも1歩ずつ1歩ずつ、少しでも何かができることに感謝しながら前に進んでいくことで、自分がこれからすべきこと、していきたいことがクリアになっていくようでした。大きく変わったことは、怒ったり、イライラするということがほとんどなくなったということと、こうあるべき、という自分の信念みたいなものにこだわらなくなったということでしょうか。今までは“こうしなくてはならない”“こうであるべきだ”という思いにいつもがんじがらめになっていて、周りにも自分のペースに合わせさせようとして、うまくいかないとイライラして、の繰り返しだったように思う。

でも、怪我以来、なんかそんなことはもう全てどうでもよくなって、まあ、その場その場で臨機応変にやっていけばいいや、とある意味腹をくくれるようになったというか。でもそうしてその場その場で生きていくと腹をくくることは、もちろん不安要素はあるにせよ、でもやはり快活なものである。ああ、自分は何をして生きていってもいいんだ、という安心感と、さあ、これから何をしてやろう?とわくわくする気持ち。というか、今まで私は一体何に縛られてきたのでしょうね?いまとなってみるとよくわからないです(笑)。これからも、新しいことへの不安とワクワク感で生きてゆくのだなあ。きっと時にはすごく不安になるだろうけど、でも、そこに留まらないで、どんどん頭を切り替えて、次へ次へと進んでいけたらいいなと思う。
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プロフィール

Yumiko Mori

Author:Yumiko Mori
森有美子(ソプラノ)http://twitter.com/yumikomori
東京音楽大学声楽演奏家コース卒業。東京音楽大学卒業後、東京芸術大学音楽学部声楽科を経て2002-03年度ロータリー財団国際親善奨学生としてイタリア・ローマのAccademia Internazionale di Musicaへ留学。帰国後、東京芸術大学大学院古楽科バロック声楽専攻修士課程に入学。特にバロック初期のイタリア音楽を専門に研究し、修士課程を修了。宗教曲、バロック音楽からオペラ、現代曲の委嘱作品の録音など幅広いレパートリーをこなす。2010年には金子みすずの詩集による歌曲集「わらひ」(久保田翠作曲)CDもリリース。また、デュオアンサンブル「Gemelli」、トリオアンサンブル「La Musica Secreta」、リコーダーアンサンブル「Ederebivere」などを結成、様々なタイプのアンサンブル活動にも力を入れている。日本ヘンデル協会、日本イタリア古楽協会会員。趣味は美味しいものを食べること、いろいろなお菓子を作ること。将来、カフェを併設したコンサートサロンを経営するのが夢。

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